かぜとつよいかぜと

わたしは、こどものままで、かれも、こどものままで、
いま、かれとさよならしたのに、
そのあとの、ほんとうのさよならを、しっているのに、


いつも、すこしのあいだのさよならのまえには、
かれはきまって、わたしのあたまをなでる。
いちねんくらいして、かれはまたもどってくる。


なでられた方向にわたしはずっと傾いたままで、
彼の顔もはっきりおぼえていないのに、


泣きながらゴミ出しをしたり、
泣きながらポストをのぞいたり、
きょうはとてもいそがしい。


上海ベイビー (文春文庫)

きょうは一日中 交信を

ベランダのドアを少しあけていると、同居人のカメが
しつこくいやがる。今日はそうきめていたんだから、
しかたないでしょ、春がきてますよ、と説得したがどうも
なっとくがいかないようで、珍しく口を開けて歌いだす。
カメのうた、はじめて聴きました。
それから少し眠ってみる。・・じつに気持ちいい。


恋人からメールがくる。
どうにか携帯はさわったが、見ずにまた眠りにつく。
カメにもメールがきている。


ねぇ けーたい なったよ 


あれ、誰の声だろうと目をぎゅっと開ける。
カメの携帯のまわりでなにかぐるぐる踊っている。


TOGAWA FICTION

恋人の住むほうがくから すこしずつ

あかるくなっていくようです。

ただそこは、近くに池があったり、なかったり、
しないといけない場所なので、
かんたんに多くをかたることはできません。
教えてもらったのも、3日前で、しかもお酒の席だったわけで、
覚えてることもあやふやです。
いまも寝る前に戦国ものの小説を読みながら、こども番組の
毛だらけのやたらと大きいキャラクターをおもいだして、
それで3日前の、池の話をおもいだしたんです。


わたしの、半径1メートル以内に、
恋人が近づくと、なぜかその日の夜はいやな夢をみます。
庭にうめたうんちを、犬が掘り返したり、
窓をあけると海がみえて、まぐろ(だとなぜか確信した魚)が、
口をあけてこっちをみていたり。
嫉妬とか、そおいうたぐいのものが生み出すんだと、
さいきんパソコンをやっと覚えたお母さんが、
メールを送ってくる。




BLUE MOON BLUE